Vol.11-3 お待ちかね オークション速報 完結編
21st NAPA AUCTIONナパ・オークションin 2001
Ode to Napa Valley
第2弾でお話したように、錚々たる顔ぶれの豪華な屋台でピックアップしたランチと、ボランティアの手で運ばれてくる数々のワインをテント内のテーブルで楽しみながら、ライヴ・オークションの始まりを今や遅しと待ちわびるゲスト達。12時半ジャストにアナウンスとともに壇上にあがりスピーチをするモンダヴィ翁。カリフォウニアワインを世界の舞台に立てるまでに導いてきた自負が、そのオーラになって放たれている感じとでもいうのでしょうか。彼の圧倒的な存在感は壇上に上がった時にこそ、その真価を発揮します。踏んできた場数に裏打ちされた本当に輝くその堂々とした振る舞い、心を震わすスピーチ、彼に会うすべての人を尊敬の念とともに虜にしてしまう人柄。セレブリティの王道を行く、まさにカリフォルニアワインのキングです。
ひとわたりセレモニー色の強い開会式がすむと、さぁお待ちかね。いよいよ愛と歓喜そして熱狂の6時間、さらなる別世界への扉が開かれる瞬間がやってきます。今年のロット数は140。第2弾で詳しくご紹介した名物オークショニエ、フリッツ・ハットンがステージに登がるやいなや、いきなり上がるボルテージ。今年はNVVA(ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズ・アソシエーション)考えました、しょっぱなからの盛り上げ方。ダシモノはワインだけじゃないのよ、これが。
●ロットNo.1:『 Best Table in the House 』 ←すごいタイトル!
落札者とその友人7人のための『VIP特別扱い@オークション会場、フレンチ・ランドリーでのディナー&送迎、オリジナル・テーブルウエア、マグナムボトル7本+3リッターのエッチングボトル1本セット』
栄えあるロット番号1番の落札者は、ファンファーレとともにステージ真正面のテーブルに案内されて、NVVAに加盟しているどのワイナリーの銘柄でも飲み放題。しかもオーナー自らグラスに注ぎに来てくれるのです。センターテーブルには、ランチが盛られたマルグリット・モンダヴィ手描きのお皿が用意されていて、食べ終わった後は各人お土産として持ち帰れます。しかもこれだけではありません。オークション終了後には「1947年製造のパッカード・コンヴァーチブル・リムジン」にて、今夜のディナーをいただくフレンチ・ランドリーの個室へ直行。(オークション後、ガーデンに用意されたものをゲスト全員でいただくのが通常のスケジュール)トーマス・ケラーの織り成す特別メニュー&それぞれのディッシュとベストマリアージュのワインが供され、思い出のしめくくりには、タイトルにあるようにマグナムボトル7本+ダブルマグナム(3リッター)のエッチングされたボトル1本が手渡されるという…。(銘柄は落札者のみぞ知る)これは遊び心をくすぐるオイシイ出し物、いきなり$22,000也。
拍手喝采、口笛・指笛の嵐。大音響のファンファーレ&音楽と一緒に祝いの舞のパフォーマンス行進をするお祝い軍団が、笛やラッパ、太鼓を陽気に鳴らしながら、そして水鉄砲で歓喜の攻撃をしながら?シャンパン片手に馳せ参じます。実行委員長のマルグリット&ロバート・モンダヴィ夫妻もかけつけビッグ・ハグ!
最初が盛り上がると雪崩のように次ぐ次と高値がついて…とはいかず、初期のロットはなかなか高値がつかないのが常。そのジンクスをブレイクしたのがこれ↓
●ロットNo.10:オーパス・ワン
初リリースヴィンテージ、79年~98年までの20年間分、すべてダブルマグナム。この20本、MONDAVIとROTHCHILDご両人のプライヴェートセラーから運ばれてきました。ボブおじさま今年は実行委員長の名にかけて、誰にも真似できないであろう大盤振る舞い!20世紀ヴィンテージのリリースを祝い、10組のカップル20人をご招待。オーパス・ワンのワイナリーを舞台に上述の20ヴィンテージ垂直テイスティング、GALAディナー、そしてお約束のダンスパーティが繰り広げられる2泊3日の夢の休日です。移動はすべてリムジン、テイスティングの席ではふたりのワインメーカー=ティム・モンダヴィ&フランスからその日のためにかけつけるパトリック・レオンによる解説つき、そしてダンスで疲れた体を休めるベッドは、ナパ髄一の超高級リゾート、オーベルジュ・ド・ソレイユの「キングクラスルーム」に用意されています。もちろんホストはオーパス・ワンのパートナーご両人。
このロットはアナウンスされた瞬間、会場が異様に盛り上がりました。グラスをフォークではじく音、指笛、掛け声「場内騒然」とはまさにこのこと。オークショニエの声さえかき消されがちな歓声の中、みるみる吊り上る入札額。ついに$100,000の声を聞き、それでも止まらないゲスト達のパドル総挙げ状態。上がるパドルの数もラストまで案外へらずついに$160,000…そして$200,000を越えた時点で足を踏み鳴らす人、踊りだす人続出。この紳士淑女の集まりが、ロックコンサートのオーディエンスにも負けないくらい騒ぎ立てる光景はちょっと異様です(笑)。ついに$220,000(2,700万円)に到達、これが落札価格とあいなりました。落札者=イリノイ在住のクーン氏は、ナパに「ピラーロック・ヴィンヤード」という銘柄を持つワイナリーのオーナーでもあります。
●ロットNo.33:デーヴィッド・アーサー エレヴェーション 1147
今回私を一番シアワセ(不幸かも)にしてくれたロットでございます。私の大好きなワインメーカー、愛犬たちをトラックで散歩させているおおらかなデーヴィッド。スペクテーター誌から99ポイントを献上された時、168本の「買わせてメッセージ」が残っていた逸話を持つワイナリーのオーナーです。あ、第2弾では写真つきでご紹介しましたね。
90年代のベストヴィンテージ、99ポイントの「CSエレヴェーション1147」ダブルマグナム3本セット。これにあの眺望の素晴らしいワイナリー(オーパス・ワンやダラ・ヴァレをはるか眼下に見下ろし、ナパ・ヴァレーを一望できる標高=Elevation1147フィートに位置するワイナリーで、ワインの名前はここから由来しています)で、デーヴィッド達と陽気にバーベキューディナー。招待人数は12人。←これがダシモノでございました。
12人かぁ…お客さんや友人を招待して楽しむにはいい数字。しかもVIVAのメルマガで、ワインはもとより、その眺望を大絶賛する場所!友情の印に落札してみんなを招待したら楽しそうだし、デーヴィッドも喜んでくれるに違いない。よーし決まった、これを落とそう!予算は$30,000。結構はりこんでるでしょー。$5,000、$6,000、$7,000…$10,000超えてもまだ余裕の私達。なにせこちらのバジェットは$30,000ですもの。$16,000、$18,000、$20,000…ふむ、みなさん結構がんばるじゃない…そろそろかなー$24,000、$26,000、$28,000、$30,000!えー、ここで止まって!お願い、みんなパドルをさげてー!!!おろしてちょーだい!私の願いは聞き届けられるはずもなく、さらに上昇を続ける入札価格。$33,000…$50,000、$70,000、$80,000、$90,000…ウソでしょう?!ついに$100,000の声を聞き立派な殿堂入り!そして…。なんと落札価格は$110,000。やったね、デーヴィッドおめでとう!おのれぇ、またしても…フリッツ・ハットン…。お見事な腕と技。いえいえ、ハットンの力だけではないんだけれど、それだけワインが高く評価されたという揺るぎない事実があるわけだけれど…それにしても$110,000とは。私達の夢はあえなくゴーン…(←GONE…)
「高値で落札された&日本で知名度の高い」主なロットご紹介しましょう。左から順にロットナンバー、銘柄、ボトルサイズ名、年号、本数、落札価格
●No.28 ニーバウム・コッポラ ルビコン インペリアル(6リッター)1997 1本:$30,000
インペリアルはダブルマグナムの倍、普通サイズのボトル8本分。
●No.29 コルギン・セラーズ CSハーブラム・ヴィンヤード ダブルマグナム1995 1本:$150,000(1800万円)
●No.54 スクリーミング・イーグルCS 1992~1999までのダブルマグナム垂直8本:$650,000(約8,000万円!!)
今オークション最高値&史上二番目の記録を保持、堂々女王の風格を見せつけ「ワイン造りの女神」の異名を持つこのワイナリーのワインメーカー=ハイジ・バレットも落札者のもとにかけつけました。TVやワイン雑誌のカメラクルーが殺到した瞬間です。
●No.67 リヴィングストンCS ダブルマグナム1984:$50,000
たった1本のワインに$50,000…鬼才ワインメーカー、コングスガードの実力強し
●No.77 ハイツ・ワイン・セラーズ マーサズ・ヴィンヤード 1970~1996
レギュラーボトル23年分垂直:$100,000
●No.79 オークヴィル・ワイングロウワーズ Oakville Winegrowers
ディナー6名様ご招待&オークヴィル地区に位置するワイナリーのマグナムボトル24本:$110,000
この顔ぶれはスゴイ!ダラ・ヴァレ、ハーラン・エステート、ジョセフ・フェルプス、オークフォード、オーパス・ワン、パラダイム、スクリーミング・イーグル、ショウケット…みんなの憧れ、錚々たる24ものワイナリーのワインが一度に手中におさまるだけでなく、グロス・ヴィンヤードを会場にして、マルグリット&ロバート・モンダヴィ夫妻がホストするディナーを満喫するというもの。
●No.85 ハーラン・エステート サルマナザール(9リッター)1997 1本
レギュラーサイズ12本分に該当。レザーケースつき:$160,000
●No.99 ダラ・ヴァレ マヤ ネブシャネザール(15リッター)1997 1本
レギュラーサイズ20本分に該当&レギュラーサイズ6本:$220,000
シリーズの始めにもお伝えしたように、畑の植え替えのため15リッターというビッグサイズでの寄付は最後になるマヤ。ロットNo.99終了時点で集まった寄付金は$5ミリオンに達しました。
去年はラ・ホタを落とした私達、今年は欲しいものはすべて予算オーヴァーの高値でさらわれてしまいました。…ため息ばかりついてもいられないし、おいしいワインが飲めるディナーに行こうっと。毎年のことですが、置いてあるワインでどこのテーブルにつくか決めるのは常連の常識。どこがいいかなー。オークフォードやスタッグス・リープのFAYがあるテーブルを発見!席に座るとなにやら見覚えのあるカップルが隣に…。
ケ 「あ、エレン!」
エ 「まぁ、ケイじゃないの!」
そう。スポッツウッドのランチで同じテーブルだった親日家のご夫妻でした。(秋保温泉は5回も行ったそうな。選ぶ場所がちょっとツウですね)
エ 「ねぇ、これ見てぇ、ケイ」
ケ 「?」
指先が示す胸元を見るとハート型のダイヤのネックレス。
ケ 「!!!オーマイゴッド!」
ピンときましたよ、私は。これ、No.112ハートウェル・ヴィンヤードが出した1997カベルネ6リッターボトルのおまけについていた(おまけと呼んでいいのかわからないけれど)2.5カラットのダイヤモンドのペンダントではないか!
エ 「私ぜんぜん知らなかったのだけれど、ダーリンが落としてくれていたの」
その場にいないと雰囲気が上手く伝わらないけれど、まったく自慢気に聞こえず嫌味にならず、軽やかに笑うエレンは可愛かった。こういう屈託のなさを優美と呼ぶのでしょうね。
ケ 「優しいハズバンドを持って幸せね」
エ 「ええ。私もいい男と結婚したと思うわ。ねぇ、ハニー」
にっこり微笑み、そっと彼の手に自分の指先をそえるエレン。おぉ、そうか。「ハニー」って相手を呼ぶのに、これほど似合いの場面はみつからなさそう。私もめぐり逢うならこういう殿方と結ばれなくちゃね!
去年のトップビッダー上位ふたりが不参加。これはイタイ。ルイジアナの石油王(産まれてくる孫が心配でオークションどころではない)と超優良ハイテク企業「CISCO」で大金を手にしたチェイス・ベリー氏。チェイスおじさまとは、仲良くグレイス・ファミリーの収穫をした仲です。
「?」の方のためにちょっとだけ引用しましょう。
『以前、リポートしたナパ最大のチャリティ・オークションで一躍時の人となった御仁です。グレイス・ファミリーは言うにおよばず、たった1本のスクリーミング・イーグルを5,500万円で落とし、アロウホも3,000万円で落札。セントヘレナ・ワインセンターで特別セラーに保管されているお宝ワインを瞬きひとつせず買い占めて行っただけではあきたらず?ディックが設立したグレイス・ファミリー基金にポンと1000万円を寄付していった、あのチェイス!連日TVや新聞でいやというほど報道されていたビリオネラー』というくだりのおじさま、現在はパリ在住。楽しく暮らしているのか欠席でした。
その上米国の経済状況を映し出すように、ドットコム・リッチが姿を消し、景気動向に翳りを落としていることは否めません。寄付金の額は史上空前の11億7千万円($9.8ミリオン)が集まった昨年と比較すると当然下がりました。とは言え、プライヴェートドナー(個人が自分のコレクションを寄付してくれたロット)、バレルオークション、アートオークションすべてのロットを合わせ、9億円($7.6ミリオン)!やはり桁ハズレの世界最大規模のチャリティ・イヴェントにかわりはありません。今年もたくさんの「本当に支援を必要としている人達」をサポートすることができるはずです。偉大なり、ワインのオーラとアメリカ人のチャリティ精神&米国の税制。VIVA!Napa Valley Auction!!
さぁ、ここで嬉しいビッグニュース!このオークションに参加してみたい人に朗報(いるかなー?)申し込むだけでも容易ではないこの豪華イヴェント、VIVAがお手伝いします。おふたりぐらいでしたら、なんとかなると思います。来年、申し込み時期が近づいてきたらアナウンスして募集しますから、お小遣いためておいてくださいね。
ご注意
*渡辺ケイ&VIVAスタッフと一緒に行動しなければいけない特典つき(笑)
*ご招待ではありませんから、費用はご自分の負担となります。
*カップル$2,500也の4日間イヴェントパスには、航空券、宿泊費、交通費などは一切含まれておりません。それなりの出費の覚悟が必要です。
※リポート内容は取材当時のものとなります