Vol.9-1 渡辺ケイと巡るミレニアム紀行 リポート 【初日】

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ケンウッド
シュッグ
ジャーヴィス
フロッグス・リープ
ケイマス
ニーバウム・コッポラ
シャペレー
ジョセフ・フェルプス
グレイス・ファミリー
ラッド・エステート
オーパス・ワン

1)ケンウッド

ドアを開けると、目の前にはまるで午餐会のようなテーブルセッティング。大きなフレンチドアから畑を見下ろすテラスが広がる明るいダイニングルームに、一歩足を踏み入れたとたん絶句する参加者のみなさん。ひとつひとつの丸テーブルに、眩しいくらい真っ白なクロスがかけられ、優しい色合いのフラワーアレンジメントとオードヴルがセンターを飾り、リーデルのグラスが一人につき1,2,3…全部で6個。ずらーっとミラーの前に並べられたワインの数、24本。赤ワインは丁度1時間前に抜栓したとのこと。心をこめて準備してくれたのが伝わってきます。みんなのどよめきを楽しむようにウィンクしながら「今日は私も一緒に飲むから!」キャシーが笑いながらスパークリングをついでくれる、ツアーのファーストストップはケンウッド。

ケンウッド・テイステイングルーム

ケンウッドのジャック・ロンドン・シリーズ、ウルフのボトルをお持ちの方いらっしゃいますか?ウルフを真正面にみすえて左半分を手で隠してみて。あらあら、右側に魔女の横顔がうかびあがります。今度は右を隠す。すると…お猿さんの顔が見えるではありませんか。これは偶然の産物なのか、デザイナーが遊び心で企てたのかワイナリーの人もわからないそう。ちょっと面白いでしょ。ボトルを持っていない人は、近くのワインショップに走ってくださーい。

創業時からの歴史や造りのポリシー、アーティスト・シリーズの作家との契約条件やエチケットに関する裏話を、懇切丁寧に解説してもらった後のテイスティングは、ひと味もふた味も違う感じがします。アンフィルター&アンファインがトレンドの中、かたくなにきちんとフィルタリングをする「美しくキレイな仕上がり」が身上のケンウッド。米国のホテル・レストランにしか出ていないという「イェルパ」シリーズに続き「ジャック・ロンドン」そしてリリースされたばかりの「アーティスト・シリーズ」すべてのヴァラエタルが勢揃い。私はあえて「これはカシスの香りがうんぬん」などと無粋なことは申しませんでした。ソーヴィニヨン・ブランからゲヴァーツトリミナー、ジンファンデル、メルロー、カベルネ…順々にゆっくり時間をかけてひとつひとつ堪能するメンバー、バケットに吐き出す人はあまりいません。到着してすぐ、時差もあるのに昼間のアルコールはききますよ…、大丈夫かなぁ。

海水と太陽熱から水素エネルギーを創る科学者、オフィスレディ、ワインショップのオーナー、眼科医、コンピュータ技師、ソムリエ氏と、職業はさまざまでしたが、私の心配をよそにみなさん「自立」したお酒の強~いメンバーだったのでどれだけ心強く助けられたことか。

ケンウッド・テイスティングワイン

葡萄色のタグを頼りに空港で全員を見つけ出し、サンフランシスコ湾をなでる冷たい風にふかれながらゴールデンゲートブリッジを渡って、バスにゆられること約2時間。カップルは二組、残るメンバーは皆さん一人で参加された方ばかり。ソノマに到着したメンバーの期待と微かなはにかみをとかしてくれたのはやっぱりワインでした。緊張もほぐれ、頬をピンク色にそめて向かう次なる目的地はシュッグ。

2)シュッグ

極上のピノ・ノワールを造ることで名高いウォルター・シュッグは、インシグニアの生みの親。果実をのびのび育て、鮮やかなカラーとうまみを引き出す天武の才を持つワインメーカーです。朴訥だけど茶目っ気たっぷり、話していると彼の心の穏やかさが静かにそして深ーく伝わってくる…そんな人です。カネロスの畑を一望できる小高い丘の上に立ち、この地の微小気候と己の造るワインの今のあり方、そして将来の展望を語る彼の瞳は、吸い込まれそうなくらい魅力的。

「一番大切なことは小細工しなくてもいいベストな状態の果実を育てること。あとは葡萄が自分で主張してくれるから僕は楽ができるよ。陰の苦労を見せる必要はない。高価なワインの価格競争にも興味はない。グラスに注がれた時に人の心を幸せにする、そんなワインを造りつづけたい。$40でもこんなに美味しい!ってみんなが喜ぶワインを造るのが本物の実力だよ。僕が年老いて、自分の手が動かなくなる前に、大切な技術を次の世代に伝えることも重要だ。隠さなくちゃいけないシークレットなんてなにもないさ。自分が信じる最高のワイン造りを継承していくために、今まで体得したすべての技術を一つ残らず伝えておくべきだと思っているよ。」
ウォルターの一言一言が、その真摯なまなざしが、ワインにそのまま反映されているようです。

シュッグ・カーヴ

晩餐会のようにしつらえた長方形のテーブルに、ウォルターの娘さんお手製のチキンパテやロースとビーフ、契約農家から取り寄せたというフルーツやチーズなどが美しくプレゼンテーションされていて、本当に心から歓迎してくれているのが切ないくらい伝わってきます。ほの暗いカーヴの中でバレルに囲まれ、キャンドルに灯をともし、にこやかに話してくれるウォルターは、みんなをとってもハッピーにしてくれたのでした。
ラズベリーやストロベリーのかろやかで、あまずっぱいフレーヴァーとエレガントでこしのあるボディ。見事な調和のピノ・ノワールは、彼のまっすぐな思いがストレートに心に入り込んでくる珠玉の作品です。まだ飲んだことのない方、是非お試しあれ!

「正月休みを返上して働き続け、それでも色よい返事をくれない上司を無視して来てしまいました」
「毎日遅くまで残業して1月末は休暇をとる!という姿勢を見せて飛び出してきました」
「帰ったら成田から学会へ直行です。全てをなげうってツアーに参加したため帰るのがコワイ…」
「積み立て貯金の積田です。でもワインを知ってから、お金は全然たまりません」

夜はフランシス・コッポラ監督も私もお気に入りのレストラン「ドン・ジョヴァーニ」で。自己紹介を聞きながら、私へのプレッシャーはさらに大きくなり数々の失敗をすることになるのであった…そしてそんな私にずっとついてこなければならないことを、まだ誰も知らない初日の楽しいひとときだったのです。

ディナーで飲んだワイン

● ピーター・マイケル ベルコート シャルドネー 97
● パッツ&ホール ハイドヴィンヤード ピノ 98
● エーブリュー マドロナ・ランチ 96

Day2へつづく

※リポート内容は取材当時のものとなります

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